ー高村光太郎 智恵子抄ー
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながらいふ。
阿多多羅山(安達太良山)の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
※ちなみに智恵子は福島県安達出身です。
私は東京に山が無いという・・・
全くないわけではないはずですが、関東平野の海沿いの
この辺りからは、山並みの景色が見えません。
東京に出てきて一番さみしいのが
山並の遠景が見えないところです。
私は東北の田舎で育ちました。
東を見れば奥羽山脈、西を見れば出羽山地
南東の方角に目を向ければ蔵王・・・
回れ右をして振り返れば、霊峰・月山・・・
そして・・・
足下を流れるのは日本三大急流・最上川
そんな私から言わせれば・・・
東京は山がないといふ
七年前の今日から東京に住み始めて
ずっと寂しく思っています。
そこで思い浮かぶのが・・・
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食かたゐとなるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
室生犀星 小景異情 その二より
美しき川は流れたり
そのほとりに我はすみぬ
春は春、なつはなつの
花つける堤に坐りて
こまやけき本の情けと愛とを知りぬ
いまもその川のながれ
美しき微風ととも
蒼き波たたへたり
犀川 より
東京に住み始めた記念日の今日・・・
望郷の思いが溢れます・・・
ちょっと音が飛びますね・・・残念
ちなみに、私の故郷は、東北の田舎といっても「津軽」ではありません・・・